大判例

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名古屋地方裁判所 昭和44年(ワ)1390号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告らの責任

(一) 被告勇の責任

<証拠>を総合すれば次のような事実が認められる。

本件加害車輛は被告勇の所有名義であるところ、被告勇は中学を卒業した昭和三七年ころ五年越しに父である被告徳一のすだれ製造業を手伝つていたが本件事故当日右勇が留守中遠い親類筋で右坂野家の近所に住み、同じすだれ製造業を営む布目家の娘たる被告知恵子が「ちよつと借してほしい」と言つて被告勇の母の許可を得て右車を持ち出した。その際使用目的あるいは他の者に運転を許容するか等の事情は一切つけなかつた。しかし近所でしかも家業が同業者であるため布目家所有車を坂野方で借りたり、坂野の車を布目の者が借りたりすることは以前にも例があつた。

以上の事実を総合すれば被告知恵子が本件加害車輛を持ち出すに至つたのは所有者たる被告勇の貸与にかかるものではないが、留守中とはいえキーを保管中の母に対し極めて親しい間柄にある被告知恵子の如き人間にまで貸与を禁じていたものとは解されず、その意味では限定された範囲で他人に貸与することを含めて母に保管を委任していたものと解され、従つて本件加害車輛は被告勇が被告知恵子に貸与したものと評価することができる。しかもその貸与の事態は、血縁上も住居上もかつ営業上も関係のある者への貸与でかつ即日返還を予定した一時的な貸与であるからその他特段の事情ない本件においては運行利益、運行支配とも被告勇に残つていると解される。又訴外四本の運転は被告勇のまつたく関知しないところであるが被告知恵子への貸与は被告知恵子に対し知恵子の友人あるいは知人の運転をまつたく予想せず、全面的に禁じていたと解すべき証拠はなく、従つて訴外西本の運転によつても被告勇の前記責任は断たれないものと言わなければならない。よつて被告勇は運行供用者として本件事故による損害を賠償する義務がある。

(二) 被告徳一の責任

<証拠>によれば次の事実が認められる。

本件加害車輛は昭和四一年三月か四月ごろ四十数万円<編注――このところに「で購入したものであるが、被告徳一はその代金の一部を」と挿入すべきものか。>援助したに過ぎず、その使用は主に被告勇自身の利用するところであつたが、同被告は前記のごとく家業に従事していたことから右車は時には集金や注文取りなど右営業のためにも使用されていたこと、被告坂野方には本件事故当時営業用として被告徳一所有名義の軽貨物自動車があつたが乗用車は本件加害車一台であつたこと、なお被告勇は事故当時未成年者であつたことが認められ、右事実に、本件加害車を被告知恵子に貸与したいきさつを合せ考えれば、被告徳一も被告勇とともに本件加害車の運行供用者と認めるのが相当である。よつて被告徳一は本件加害車の運行供用者として自賠法三条により本件事故による損害を賠償すべき義務がある。

(三) 被告知恵子の責任

<証拠>を総合すると次のような事実が認められる。

本件事故当日被告知恵子は本件加害車輛を運転して友人の松永寿勇らを乗せて市内をあちこちし、午後七時過頃松永の意向にて同人の知人訴外西本を誘いに行つたところ、西本が「自分が運転する。」と言つたので、右松永に対し西本の免許証の有無を尋ねたところあるとの返事であつたためキーを西本に預け、同人の運転でバー一軒、喫茶店二軒をまわりいずれも西本が酒、ビール等を飲むのに同行し、西本が酔つて正常な運転ができない状態であることを知りながら、西本の言葉つきが荒く、強く自分が運転すると言つて譲らないため強くキーの返還を求めることもなく本件事故までバーなどの出入を合せて約三時間西本に運転をまかせて同乗していた。<反証排斥略>

以上の事実によれば被告知恵子ははじめて会う訴外西本に対しキーを預けるにあたつて免許証の有無を確認すべき注意義務ならびにキーを貸与した者として飲酒運転を制止すべき注意義務を十分はたさなかつたことは明らかでありかつ右注意義務違反と本件事故の発生原因は関連性があり予見可能な範囲であるから被告知恵子は民法七〇九条により本件事故による損害を賠償すべき責任がある。

(西川力一 藤井俊彦 柄多貞介)

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